研究・教育の紹介
海水――電解質溶液
「母なる海」の言葉通り、全ての生き物は海で創造されました。陸上生活をしている人間でさえ、その体液の電解質組成は海水のそれと似ているのは、その名残であるとも言われています。海は、ただの“みずたまり”でなく、様々な電解質やガス、有機物を溶かし込んだ様々な化学反応の舞台であり、また地球上におけるそれらの物質の循環や貯蔵の担い手でもあります。
電解質は、水の性質を大きく変えます。多くの化学反応は、たとえ直接関係しなくとも、その進み方は共存電解質の種類や濃度に影響を受けます。海水の電解質濃度は高く、また種類も多いため、化学反応に及ぼす条件は純水中とは全く異なると言って良いでしょう。
電解質水溶液中における物質の性質や反応性を予測・記述しようと、古くから研究されてきました。しかしながら、全ての電解質・全ての濃度における電解質の影響に有効な理論は、未だ得られておらず、半ば諦められているのが現状です。
イオン液体とは?
海水中の電解質が全て塩化ナトリウムだとすると、その濃度は約0.6M(M = mol/L, L=dm-3)です。これは、水の性質を変化するには十分に高い濃度ですが、では、もっともっと、電解質の濃度を高くするとどうなるでしょうか?――塩化ナトリウムの水溶液を乾燥していくと、そのうち塩化ナトリウムの結晶が析出します。ところが、水が完全に無くなっても、液体のまま存在する電解質が存在します。このような化合物を「イオン液体」と呼んでいます。
イオン液体は新参の液体であり、この“電解質のみの液体”中で化学反応はどのように進むのか、基礎的なことはあまり分かっていません。そこで、海水中などで当たり前に起こっている化学反応、例えば酸塩基反応や錯生成反応が、イオン液体中ではどのように進むのかを調べています。
地球環境と関係無い?いいえ、地球上のどこでも起こっている化学反応において、“イオンがイオンであること”がどの程度影響しているのか、定量的なところは実験的にはほとんど明らかになっていないのですよ!
スライドこの1枚
イオン液体を使ったリチウムイオン2次電池